仮想通貨交換業は金融機関に含まれるか?

仮想通貨交換業は金融機関に含まれるか?

FISC安全対策基準第9版では、「金融機関等」の定義として「電子決済等代行業者などの FinTech企業等を除く」と明確に規定されています。つまり、現在の仮想通貨交換業は資金決済法に基づいていますから、金融機関ではない仮想通貨交換業等は、FISC安全対策基準の枠外ということになります。少なくとも、FISC安全対策基準が想定している読者ではない、ということになります。

現状、金融機関以外のサービス事業者が金融サービスを提供することは、家計簿アプリでも見られることです。なので、FISC安全対策基準には次のような記載もあります。

「金融機関等以外の事業者が金融機関等の外部委託先とはならず、主導的に金融関連サービスを提供する場合、金融機関等による外部の統制が及ばないか、または部分的となることが考えられる。金融機関等による外部の統制が及ばない場合は、当該金融関連サービスを提供する情報システムは、安全対策基準の適用対象外となる。また、金融機関等における外部の統制が部分的となる場合、当該金融関連サービスを提供する情報システムは、金融機関等に責務が生じる範囲において、結果として安全対策基準が部分的に適用対象となる。

ただし、注釈として、

金融機関等以外の事業者においては、各業界等で定める基準・ガイドライン等に従うことが想定されるものの、 その際、金融機関等が最低限満たすべき「基礎基準」を踏まえた安全対策が選択・適用されることが期待される。

という記載があります。

まとめると、以下のようになります。

  • 金融機関の統制が及ぶ部分についてはFISC安全対策基準の適用対象とする。
  • 金融機関の統制が及ばない部分については、FISC安全対策基準を適用する必要はない。
    • ただ、統制が及ばない部分については、各業界で定められた業界基準に従うことになるが、FISC安全対策基準の基礎基準を踏まえた安全対策を実施してほしい。

 

今後、仮想通貨交換業が、資金決済法の対象から金融商品取引法の対象に変更されるというニュースも出ていますが、「そのような事実はない」とする記事もありました。

産経:https://www.sankei.com/economy/news/180703/ecn1807030005-n1.html
産経の記事を否定する記事(仮想通貨Watch(インプレス)):https://crypto.watch.impress.co.jp/docs/news/1130997.html

今後は金融機関等の定義に仮想通貨交換業が含まれていく可能性はあまり高くないのかもしれませんが、記事として出すということは、それなりの根拠が(産経には)あると思うので、引き続き注視していく必要があります。

 

金融庁(仮想通貨交換業等に関する研究会):https://www.fsa.go.jp/news/30/singi/kasoukenkyuukai.html

あまり知られていませんが、「金融機関等コンピュータシステムの安全対策基準・解説書(証券編):平成28年3月版」というものがあります。これは、銀行と証券会社の違いを吸収するために作成されたもののようです。

 

違いを簡単に示してみます(簡単にするために、証券会社で株式を買うことを例にしてみます)。

  • 銀行は「一方的なお金の流れ」を実現していますが、証券会社は「お金の流れと逆向きに現物(株券)が流通する」という仕組みを持っています。
    • 代金支払いのための振込もありますが、モノの流通は銀行とは違う仕組みです。一方で、株式は証券会社で資金と引き替えに取引を行うものです。
  • 証券会社で扱う株式は、「価格」が取引所で決まること、そして「成立しない注文がある」という特徴があります。
    • 銀行の振り込み金額は、指定した金額がそのまま支払われますが、株式の場合は(成行で注文した場合は)成立するまで金額は確定しません。また、「発注しても成立しない」という取引が存在します。

このため、銀行に対する、従来の安全基準の枠組みでは不足することから、証券編ができていたようなのですが、証券編の中心となる市場での取引に関する基準が、第9版では取り込まれていませんでした。証券編の安全対策基準は平成28年(2016年)ですから、おそらくアルゴリズム取引あたりが問題視されたときに作成されたもので、第8版追補をベースに作成されているように見えます。第9版改訂の際に統合しようとしたのか、証券編や保険編の細かな用語の違いはうまく第9版に吸収しているようですが、特有の基準は証券編・保険編に残ったままとなりました。

 

今後、仮想通貨の市場が拡大していくとともに、法規制も拡大していくことになるでしょうから、類似の業種である証券会社に対する規制が準用されていくのだろうと予想しています。

ただ、仮想通貨の場合は、証券会社とも異なる特徴があります。

  • 「取引所」という明確な場所がありません。言ってみれば「インターネット上のサーバ」が取引所の機能を持っています。それは特定の場所にあるものではなく、まさに分散して処理を行う、仮想的な取引所です。
  • 証券口座のような集約された場所に口座があるわけではなく、それぞれのウォレットに保管されているため、その特定は非常に難しくなります。

こういった特徴に対する、FISC安全対策基準の準用(と、これからの仮想通貨交換業において、あった方が良いと思われる基準)についても、今後解説することにします。