【解説】金融庁の平成30事務年度方針

【解説】金融庁の平成30事務年度方針

<ざっくり言うと>

  • 金融庁が、9月26日に、平成30事務年度における方針を公開した。
  • 仮想通貨業界については、利用者保護が最優先であり、問題が起これば速やかに検査を行うことを明確に示している。
  • Fintechによる新規サービスに対する「柔軟な規制」を行うとしている反面、仮想通貨ビジネス協会に対して厳格な審査を行う、と釘を刺すことを忘れていない。


9月26日、金融庁は平成30事務年度における方針を公開しました。「事務年度」とは、7月から翌年6月までのことです。つまり今年の7月から来年6月までの行政方針が示されたということです。以前は「金融行政方針」という名前でしたが、今年から「変革期における金融サービスの向上にむけて~金融行政のこれまでの実践と今後の方針~ 」という名称に変更されました。

この中から、仮想通貨に関する記載について取り上げます。

1.方針

まず、(このブログでも何度も取り上げていますが)外部流出事案が発生したこともあり、利用者の保護を最優先にしつつ、業界を(金融庁の考える)適正な状態に持っていく、と示されています。(以下の引用のうち、太字・下線は筆者によるものです)

仮想通貨(暗号資産)にかかる価格の乱高下や新たな取引(証拠金取引やICO等)の登場、顧客からの預り資産の外部流出事案の発生等、仮想通貨を取り巻く内外の環境は急速に変化している。こうした中、イノベーションに配意しつつ、利用者保護の確保に向けて、仮想通貨交換業の適正化を図っていく。

2.金融デジタライゼーション施策

「金融デジタライゼーション施策」は、金融庁が掲げている大きな施策を11個のカテゴリに分類したものです。この中には、仮想通貨を直接取り上げているものはありませんでしたが、最後の「課題を実現するための機能別・横断的法制」について、こんな記載がありました。

各プレイヤーが金融・非金融の組み合わせによりどのようなサービスを提供している場合であっても、その金融面での機能・リスクを適切に評価し、同一の機能・同一のリスクに対しては同一のルールの適用を徹底することが重要である。
(中略)
利用者利便や生産性の向上に資するサービスが提供されやすい公正な環境を整備する観点からは、多様なプレイヤーを現在の各業法の業態に当てはめて規制するよりも、各プレイヤーが自由にビジネスモデルを選択した上で、そのビジネスモデルやサービスの果たす機能・リスクに応じて、ルールが過不足なく適用されていくことが望ましい。このため、利用者資産の保護やシステミックリスクの防止(金融システムの安定性の確保)を含め、各プレイヤーのサービスの機能・リスクに応じて金融規制を柔構造化し、業態にとらわれない整合的・横断的な金融規制体系を具体化していくことが重要な課題である。

先ほども取り上げたとおり、「利用者保護」が前提ではありますが、サービスやリスクに応じた規制体系を作り上げたい、としています。これは、新しい(金融)サービスに対して、柔軟に規制を適用するとも読める反面、新しいサービスが(金融庁の考える)金融サービスに抵触していると判断された場合、規制が適用される、という読み方もできます。業態にとらわれない金融規制という表現に矛盾を感じますが、銀行や証券会社といった金融機関の業態のことを指しているのかもしれません。

3.モニタリング

仮想通貨事業者に対する現状の評価、昨年度の実績、今年度の予定が記載されていました。
課題認識としては、これまでこのブログで取り上げてきた内容に沿っているので割愛します。今年度の方針については以下のように記載されています。

登録業者に対しては、タイムリーな情報収集・リスク把握及びこれに基づくリスクプロファイリングの精緻化・頻繁な更新を通じて、機動的な検査等を実施する等、モニタリングの質の向上に努める。

8月の中間とりまとめの内容がかなり(金融庁にとって)衝撃的だったのでしょうか。機動的な検査を実施する、と明確に打ち出しています。もちろん、実態としては(Zaifの例を見るまでもなく)質問書を送付する、といった素早い動きを見せていますが、「いつでも行ける」ということをアピールすることで、牽制しようとしているという見方もできます。

自主規制団体の認定申請について、組織体制や自主規制規則の策定のみならず、協会のガバナンスや会員への指導力等の実態面から、その実効性等について厳格に審査を実施する。

ここで、気になることが出てきます。施策として「ビジネスモデルやサービスの果たす機能・リスクに応じて、ルールが過不足なく適用されていく」ことを、大きく打ち出しているのに対して、自主規制団体の認定にあたっては、「協会のガバナンスを厳格に審査する」と記載しています。

新しいビジネスモデル(の一部)が、自主規制団体の規制内容に抵触するようなものだった場合、「リスクに応じた」ルールではなく「自主規制団体の策定した」ルールが適用されます。

例えば仮想通貨の新しい取引形態が出現した場合、新しいサービスでありながらも、自主規制団体のガバナンスによって、身動きが取れない状態になるか、協会に加盟していない他社でのサービス開始を受けて、五月雨で開始していくことになります。変化のスピードの速い業界において、この協会の策定する自主規制とガバナンスの内容によっては、既存の仮想通貨交換事業者にとって、足かせになることが懸念されます。

4.まとめ

詳細は以前のブログで取り上げているので、今回は割愛しましたが、仮想通貨交換業者においては、「中間とりまとめ」と、業務改善命令の指摘事項に対応することが、金融庁として最優先であることがわかります。

自主規制団体としての協会がどのように規制を策定し、どのようにカバナンスを効かせるのか、といったところも、今後注視する必要がありそうです。

 

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